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歴史

1950-2020

鳴尾の流儀とクラブライフ

「運営」の歩み

「一般社団法人日本ゴルフ場経営者協会」がゴルフ場利用税から割り出したデータによれば、調査初年度の1957(昭和32)年の日本のゴルフ場数は116コース。1975年に初めて1000を超え1093コースとなり、1986年には1538コース、1992年には2028コースと増加を続けてきた。ゴルフ場当たりの入場者数も1957年には15716人だったものが、翌1958年には21128人と早くも2万人を突破。ピークを迎えた1990年には1コース平均52361人が1年間にプレーするという盛況ぶりだった。
しかし、ゴルフ場数は2009年の2445コースが最多で以降は毎年減り続け、2019年の調査では2227コース。入場者数は1コース平均で年間38603人まで減少している。
この減少傾向が始まったのは1991年。バブル経済が崩壊し、日本の景気が顕著に悪化した年からである。鳴尾ゴルフ倶楽部においては1983年をピークとし、1990年代にはゲストの来場数が大幅に減少。新規入会の社員数も減少傾向が明らかとなる。
戦後初めて迎えるクラブの危機に直面し、鎌倉利行理事長の任命により、筏純一グリーン委員長(当時。現理事長)を座長として2003年5月に発足したのが「未来研究会」であった。

「未来研究会」の提言

ゴルフクラブがその存在意義を全うするためには、当然のことではあるが、健全な財政を欠かすことはできない。では、どうすれば健全な財政を確保し、クラブを未来へと導く事が出来るのか。一般的に考えて、ゴルフ場の経営改善には2つの大きな柱がある。
一つは、入場者数。なかでもゲストの数を増やすことである。
二つ目は、メンバー数。新規入社するメンバー数を増やすことである。
ひと口にクラブと言っても、その成り立ちは多様であり、運営の方法もまたそれぞれ異なる。英国のプライベートクラブを原点として創立し、その伝統を守り続けてきたクラブにふさわしいものとして「未来研究会」が出した結論は、「クラブ運営の最大のポイントは『クラブを支える事の出来るメンバー(社員)確保』であり、ゲスト確保以前に優先すべきである」というものであった。
「未来研究会」は討議と研究を重ね、同年9月、理事会に対して「提言書鳴尾の将来へ向けて」を提出した。
「将来の鳴尾の在り方について討議を重ねた結果、『完全プライベートゴルフクラブとして生きることが、将来での鳴尾の健全なさらなる発展をもたらす』という結論に達した。
それははっきりとした主張を持ち、他のゴルフクラブとは違う特異性を示すものでなければならない。まずは今一般的なゴルフクラブが歩もうとしているセミパブリックヘの道を否定して、 現在の日本では数少ないプライベートゴルフクラブとしての存在を選ぶということである。プライートクラブはメンバーの経済的負担によって成立する訳で、その為にはクラブの将来を支えて行く事が出来るメンバー(社員)の継続的確保こそが最重要課題である。人間的質の高さに加えて、いかにメンバーとしてアクティブであり、経済的負担をも果せるかが将来の鳴尾を支えるメンバーの要件である。
この様なメンバーの確保が、クラブ運営の簡素化と共にクラブ成立に必要な高稼動の確保にもつながると考える。将来の鳴尾のあるべき姿としては、公的な存在意義や現在の社員の既得権等は勘案するとしても、まず何よりもクラブを支えるメンバーが満足出来る豊かなクラブライフを持ち続けるというものでなければならない。すなわち一面で社会と融和しつつも、非常に制限された人々(メンバー)に対して存在する閉鎖的なものであるという、貴重なプライベートクラブの在り方の原点をはっきりと見つめ直す必要がある。

「未来研究会」の提言
「未来研究会」メンバー グリーン委員長・筏純一、 広報委員・富永幸一、 グリーン副委員長・奥田太加幸、 キャディ委員・岡本安明、 財務委員・菅野有生央 ※肩書は当時のもの

従って営業的にも一般的クラブがめざす様な大きなマーケティング(来場者数3〜4万人)ではなく、あくまで当クラブにとって良いメンバー確保に徹するべきである。その為には、そのアクティブで経済的負担を果せる人々が入会に魅力を感じるゴルフクラブでなければならない」
「未来研究会」の提言書には、完全プライベートクラブとして魅力を高める方法として、数々の多岐に及んだ具体策が挙げられている。実施されてきたその中のいくつかをここでは紹介する。
・世界に認められたコースの認知度を高める
・コースの基本コンセプトを理解し、良い状態で維持する
・簡素だが手入れの行き届いた施設と上品な接客
・クラブの持つ歴史と文化を継承していく
・鳴尾の社員ならではの自由度の高いクラブ利用
(プレー時間、プレースタイル)
・入会したい魅力を持つための、他クラブとの差別化

また、「提言書」はその最後を「当研究会としては、クラブの方向性の明示と共に、先に述べた実施案の実行によって『真のプライベート ゴルフクラブ』という理想は必ず実現されると確信する」と結んでいる。
提言書に挙げられたこれらの具体策は、すみやかに実行され、現在のクラブ運営に活かされている。

週日社員制度の導入

週日社員制度もまた、メンバー減少に対する解決策として2003年(平成15年)に導入されたものである。
そもそも週日社員制度が検討された理由は、「スポーツとしてのゴルフの魅力が変化する中で、いかにこの運動クラブ(鳴尾)に良質な運動部員(社員)を集めるか。ここの将来のため、社員のため。社員が、新しい友達を連れてくる、とか入社させるとか、鳴尾の良さを知らしめる、楽しみ方を伝えなくてはならない」(永井荘一郎元常務理事)というものであった。
2002年11月の社報44号に、2002年7月24日の臨時社員総会の記録として、以下のような記述がある。
「人(社員)が活力を生むので、人(社員)が減っては活力が無くなる。人(社員)が欲しい。だが現在の経済環境では恒常的に人を集められる状況ではない。人は入れなくてはならないが妙案はない。そこで昨年春以来理事会で週日社員制度の導入を検討してきた結果、この臨時社員総会に提案することを決定いたしました」
この臨時社員総会では週日社員の募集を承認決議するとともに、定款の細則を改定し、社員の年齢の制限を「正社員は満30才とする。週日社員は当クラブの社員として相応しい人であれば年令を問わない」とした。
「週日社員募集の根拠は週日の収支をよくするということよりも新しい世代のクラブを担う人を確保するというのが最大の狙いである」(2002年11月、社報44号) 週日社員の導入が決議された当時の鎌倉利行理事長はこう述べている。
「社員はクラブの財産です。社員が減少したり、眠っていたりしたのでは、いいクラブになる筈がありません。優秀でアクティブな社員の継続的確保こそが、クラブ存立の必須要件であり、その前提としてコース・施設・従業員の全てにおいてクラブを魅力あるものにする必要があります」(2004年3月、社報47号)
正社員への門戸を広げることにより新しい人材の確保を目指した週日社員制度は、翌年の第1回募集で28名が入社、最終的には200余名が入社するという大きな成果を挙げた。2010年(平成22年)以降は、平日社員制度となり現在に至っている。

特別給付金の事前辞退制度の実施

バブル崩壊、ゴルファー人口の減少の波に晒されたクラブは、健全な経営を維持するために質の高い社員を増やすだけでなく、クラブの財政そのものにメスを入れる必要を感じていた。そこで実施されたのが2004年9月29日の理事会により決議された「特別給付金の事前辞退制度」である。
退社時に支給される「特別給付金」を辞退することで、クラブの財政に協力するというこの制度が承認され、多くの社員が辞退する書類を提出したことは、鳴尾の社員の意識の高さを物語る出来事であった。

クラブの魅力の発信

2012年12月、日本経済新聞関西版に佐渡裕氏、水巻善典プロの対談「鳴尾ゴルフ倶楽部を語る」が掲載された。新聞の全面を使ったこの企画は、一見すると記事にしか見えないものであったが、その実は鳴尾の魅力を発信するための新たな試みであった。この画期的な試みの背景にあったのもまた、外に向けて鳴尾ゴルフ倶楽部の「クラブライフの愉しさ」をアピールすることで、価値観を共有する事の出来るメンバーを集めようという、「未来研究会」の活動が原点となっている。
当時の宮武健次郎理事長によれば、この企画の意図は次のようなものであった。
「鳴尾の魅力を再発見してもらうための情報発信の一環として企画したもの。クラブ、コースの素晴らしさを伝えるとともに、けっして敷居が高いだけのクラブではないことを知ってほしかった」
さらに2014年12月から2015年8月には、ゴルフネットワーク(CSチャンネル)においてテレビ番組「鳴尾ゴルフ倶楽部物語」が放映された。
この番組も魅力の発信を目的とした施策であったが、その内容は鳴尾所属の水巻善典プロがクラブメンバーや倉本昌弘プロとともに、クラブの伝統、歴史、そしてコースを紹介することを主軸として構成されている。
「クラブの考えに共感した人、ゴルフを愛するレベルの高い方に来てほしい」(服部盛隆前理事長)というコンセプトにより制作された番組は、「あの鳴尾が!」という驚きとともに「さすが鳴尾」と評され、将来の鳴尾を支える社員が多数入社する結果となった。

クラブの魅力の発信
日本経済新聞関西版に掲載された、 世界的指揮者でありゴルフ愛好家としても知られる 佐渡裕氏(右)と水巻善典プロの対談

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